加入試験(適性検査) 

 傭兵ギルドでは加入の際、幾つかの試験が行われる。 (コネによる加入は、この試験を無条件にパスすることができる)

 試験には筆記試験と実技試験があり、筆記は幼い子供でも解答できる簡単な内容である。これは加入後、講習を理解できる最低限の読み書きができるかをを確認する程度のものである。

 実技は厳しく、いきなり実弾を使用して、ダミーと呼ばれる敵と闘わねばならない。しかも、ダミーとして立ちはだかる敵は、訓練生である。敵の攻撃を躱しつつ、そのときに与えられた目的を達成した者のみが、実技をパスした事になる。

 筆記と実技をパスした者が、傭兵ギルドへの加入を許される。

 このときの成績や過去の戦闘経験によって、すぐに傭兵として登録されるか、訓練生として教育を受けるかが決まる。実戦経験の無い者は、例外を除き訓練生として一定の技量と経験を得るまで教育される。

傭兵養成学校 

 傭兵ギルドでは、一定の技量と素質を持ちながらも、戦場での経験や知識の乏しい者を教育する学校がある。
 生徒は「訓練生」と呼ばれ、決められた技量に達するまで、学校での教育を受けなければならない。

 ほとんどの生徒は未成年の少年少女たちであるが、大怪我をしてしばらく戦地から離れていた者がリハビリで来る者も僅かには存在する。加入試験でダミー役として立ちはだかるのも試験の一つである。

 卒業するには試験に合格しなければならない。そのすべては実技であり士官学校のように筆記はない。しかし、兵器や闘いに精通するには結局、多くの事を覚えなければならない。個人の技量や才能によって、入学から卒業までの期間は大きな開きがある。
依頼 


 依頼は、ギルドが傭兵の中で実力者として擁立した頭(チーフ)に対してのみ行われる(※1)。これはリストボートに依頼と報酬だけを明記、早いもの順で仕事を受けることができる。
また、詳細な情報は依頼を引き受けた後に初めて得ることができる。

 この内容によっては、依頼を断るケースもあるが、それを判断できるのは傭兵ギルドの上層部のみである。よって基本的に断れないと考えるのが普通である。ただ、頭ともなれば、金額と簡易な依頼内容だけで、たいていの状況(戦況)は読み取れるので、ある程度自由度が残っている。

 大規模な攻略作戦などは、これが完了するまで拘束されることがある。そこで受けた依頼を断ることはできないが、一つ一つの依頼に対する報酬は単体で引き受けるものよりも若干高額となる。
 
なお、普通の傭兵たちは個別で仕事を請けることはまずない(※2)

 個別のときは、ギルドから直接依頼を受けることはできない。そのため、リストボードに自らのプロフィールを掲載し、依頼を引き受けた頭からの連絡を待つか、または頭が依頼に必要なメンバーを募集しているのを応募するのみである。
 もし頭に認められれば、専属契約を結び、性に合わない依頼を選ばないようにすることが可能になるなどより柔軟に依頼を受けることができるようになる。

※1  場所によって、頭、統領、長、または軍の階級で呼ばれたりする。
※2  隠密には個人契約が存在し、表では頼めない仕事を引き受ける「特別」な存在が確認されているが、これを知る者はごく一部である。

戦闘記録と報酬 

 任務の遂行状態や目的の達成状況を、クライアント、もしくは頭が知る方法として、兵士個人個人の脳に埋め込める外部記憶装置が利用されている。これで兵士が見聞きした情報を記憶し、あとで端末と接続してデータを引き出すのである。

 これで傭兵の状況や戦闘内容の検証、個人的には自己の評価まで、様々な目的に利用され、さらに報酬金額を割り出しているのである。

 実際には、これと現場の映像を組み合わせるのだが、これは不正防止のための検証を目的としている。
 なお、これらの記憶装置やデータは傭兵ギルドだけでなく、地球連合、ディック惑星連合そしてホライズン共同体においても同等のものが利用されている。
もちろん装置、データ共に最高機密扱いであり、特にデータを流出させたものは反逆罪の適用対象となる。
 個人的な自己の評価のため使用する場合でも、厳しい審査と検閲が行われ、外部との接触が一切絶たれた専用の個室でのみの利用となる。それほどそこに収められているデータは貴重で多くの情報が入力されているのである。
育成と支援 

 傭兵稼業は確かに高収入であり、短い期間(20年から40年)の収入でも、贅沢さえ望まなければ、十分に余生を暮らすことができるほどである。それなりに人気のある職業であるが、ギルドとしてはもっと多くの者を勧誘したいと思っている。

 各政府軍に入隊する方が保障は多いので、志望者の割合を見ても政府軍が7割、傭兵が3割である。ホライズン星系でも割合が逆転するまでには至っていない。それは国軍より厳しい制度があるために他ならないのだが、これは運営上不可欠なものである。

 よって傭兵ギルドは、より多くの傭兵(の登録)を確保するため、各惑星やステーションで定期的にキャンペーンを催し、アピールを欠かさない。これは同時に、傭兵(特に質の高い者)になれる資質を持つ人材を捜しだす意味もあるのだが、そのためには無償の教育やサイバーパーツの提供、戦闘訓練の実施などを行う。

 こうして支援された人物は傭兵ギルドの勧誘広告にも利用され、「傭兵で宝くじより確率の高い報酬金額を入手して余生を楽しく生きよう!」という謳い文句と共にホログラムで流されている。
企業との癒着 


 傭兵ギルドは多くの企業とコネクションを持っている。また、政府機関に対しても強い圧力をかけることが可能であった。
 政府機関の、公にはとてもできない仕事を請け負うということはまた、政府機関の弱みをにぎることでもあった。これによって、ギルドは労せずに多くの秘密情報を手に入れることができるのである。

一方、巨大企業は、非合法な研究の実験の場やそのサンプル提供を常に必要としていた。その欲求に答えるのが、傭兵ギルドであった。特に軍事産業、バイオケミカル産業は傭兵を実験台にすることが多いからである。
実験台というと聞こえは悪いが、このことにより、
傭兵たちも少なからず利を得ていた。プロトタイプのアンドロイドを戦場で投入したり、新薬によって永久的な能力向上が期待できたからである。
 よく言えば「持ちつ持たれつ」、傭兵ギルドはこのようにして、独自のコネクションを保持していた。

資金援助 

 傭兵ギルドに加入した傭兵は、資金を必要とした場合(ケガ、改良など)、必要に応じて援助を受けることが出来るシステムがある。

 返還方法は一括払いから分割まで選べるが、滞ると強制的に仕事を遂行させて報酬を天引きする方法がとられる。また、それに対する利子は低いので、かなり延滞しても借金が膨れ上がることはない。

 貸し出しの上限は、能力別による傭兵の平均生存期と、その間稼ぐことができる金額を求めた数値までと決まっている。途中で死亡した場合、ギルドが返済を免除することになっているが、自殺しそうな相手にはあらかじめ思考制御するチップを強制的に埋め込まれ、その行為を阻止することになっている。