2653年3月、後に「サイフェルト戦役」と呼ばれる、南北ファーティリック大陸全土に戦渦を拡げた戦争は、オムニ連邦軍の勝利と、一人の独裁者の終焉という結末で、その終わりを告げた。
常に作戦の先鋒に立ち数々の任務を果たしてきた、第177特務大隊DoLLSも、その役目を終え、隊員達はそれぞれの場所へ帰っていった。




しかし、終戦という事実によって全てに平和をもたらすには、世界は疲弊しすぎていた。
11年に及ぶ戦争で、オムニ、サイフェルトという、ニ国による均衡が崩れた結果、それまでも懸案事項でありながら押さえられていた、復興の遅れによる民衆の不満が、再度噴出する事となった。
そして、密かに各地でサイフェルトを支援していた新移民、地球至上主義の急進派によるゲリラ的な武装蜂起が、連鎖的に起こったのである。
それは取りも直さず、オムニリングと呼ばれる開拓民の子孫たちと、新移民との対立の構図が根強くオムニ全土に広がっていることの証明でもあった。



また、終戦時に展開していた、サイフェルト軍の帰還や武装解除の問題等、戦後処理の遅れも、大きな社会問題となっていた。
特に、サイフェルト戦役における戦闘の中心が、北ファーティリック大陸の西部であった事もあり、南ファーティリック大陸に展開していたサイフェルト軍は、その戦力のほとんどを温存する形で徹底抗戦の構えを見せていた為、終戦処理を進める上での障害になっていた。



しかし、勝利したとは言え、オムニ連邦軍の損害も大きく、復興や治安維持等の充分な対応が出来ているとは、言い難い状況であった。
そこで、そうした様々な事態に即時対応の出来る緊急展開部隊の存在が、再び必要になった。



全天候型多目的戦闘陸戦兵器、パワーローダー。



空中輸送と降下による、他の兵器には無い展開性。
歩行機械による、装軌・装輪式車輌を凌駕する、整地・不整地走破性。
マニュピレーターによる、多様な目的に対する、柔軟な対応性。
複雑になった、操縦・火器官制のコントロールを可能にした、様々な装置群。



そして、それを駆使し、あらゆる状況に対応できる運用実績を持つ部隊。
Detachement of Limited Line Service
177特務大隊・DoLLS。




かくして、フェイエン・ノールの元、DoLLSは三度、結成される運びとなり、選抜された隊員達は、それぞれの居場所に温もりを伝える間も無く、部隊編成地であるナキストに集められた。





世界は、新しい時代の一歩を踏み出そうとしていた。