第2回:いや,ダムそれほど遠くないっす。
さて今回から各ミッションの攻略に入る。いきなり攻略なので,自分の力で解きたい人はぜひ,解いたあとに読んでみてほしい。第一弾は「遠すぎたダム大作戦」である。
当連載では条件を統一するため,キャンペーンでなく個別シナリオでプレイしていく

ダムを爆破決壊させて敵を足止めしようというこの作戦,冷静に考えるとかなり悲壮な焦土戦術である。第二次世界大戦の実例に沿って考えると,規模にもよるが決壊したダムの下流域は普通,洪水でかなり致命的なダメージを受ける。それを覚悟で爆破を命ずるオムニ独立軍司令部の心境や推して知るべし。なんとしても成功させたい。
ミッションブリーフィングおよび,作戦地図から読み取れる敵情を要約すると,おおよそ次のようになる。
 1.ダム近辺にいるのは,車両とパワーローダーを含む3個中隊ほど
 2.ダムの北東に,1個中隊程度の敵
 3.1時間(12ターン)の距離にパワーローダー2個中隊ほど
 4.そのまた後ろに1個大隊(3〜4個中隊)規模の敵軍

ミッションブリーフィング画面。ちなみに作戦の原案提示は初代「パワードール」と異なり,プランA/Bの二者択一ではなく,「パワードール2」以降のタイプに合わせて,各部隊の任務や降下時刻を設定できるタイプである
作戦地域における敵の動静を示す地図。ダム北東にいる1個中隊が少々気になるが,とくに打てる手はない

このうち3.と4.には,追いつかれたらまず作戦失敗だろう。つまり12ターンそこそこで,確実にすべてを終える必要がある。2.についてはまったく動静不明なので,せいぜい周囲を警戒すべしというところだ。つまり確実に排除すべきはダム近辺にいる3個中隊の敵で,こいつらを片付けない限り,おちおち爆薬も仕掛けられない。
作戦目的と敵情を掴んだら,部隊編成時に満たすべき条件を整理してみる。動員できるパイロットは9名,ダム爆破に必要なTX48高性能爆薬は最低3個で,6個が推奨されている。この時点ですでに,初期装備では満足に条件を満たせないことが分かるはず。
シナリオスタート時点における各パイロットの搭乗機体は,汎用型のX3Aが3機,白兵戦型のX3Cが3機,索敵型のX3Rが2機,支援車両が1両である。汎用型には両手両肩で四つのハードポイントがあるからよいが,白兵戦型は両手のみで二つ。臨機射撃用のサブマシンガンは必須の装備だから,白兵戦型に爆薬を持たせると,本当に白兵戦以外できなくなる。いくらなんでもそれはナシだろう。

それぞれ「武装複写」(左)と「武装呼出」を試してみたところ。例えばセルマ様の武装をコピーしてもいいのだが,さすがに発煙装置よりはミサイルを大量に持っていくべきだろう
そこで,白兵戦型に乗っている3人の能力を確認してみる。ええと,ヤオ姉さんの対地攻撃補正3はどうにもならないとして,残り二人は鉄砲屋さんとしてもやっていけそうな能力。よし,ヤオ姉さんを残して汎用機に転向だ。これで運べる爆薬は5個になった計算である。つまり汎用機が立て続けに3機撃破されないかぎり,爆薬の不足は生じない。射撃で大活躍できそうにないヤオ姉さんには,部隊の先頭で壁役を務めてもらおう。
次に,パワーローダー各型の装備を固める。白兵戦型と索敵型は,そのままでよさそうだ。白兵戦型はサブマシンガンのほかにグレネードランチャーを持っているが,初代「パワードール」と違って「パワードール1」のグレネードは戦車にもそこそこ有効だし,貴重な曲射&範囲攻撃兵器であって,射線が通らない位置への攻撃には必須である。射程の短さが泣き所だが,敵に肉薄する白兵戦機との組み合わせは悪くない。
考えるべきは汎用機だ。手に持たせるのはサブマシンガンと爆薬で確定しているとして,肩装備には選択の余地がある。ファン・クァンメイさんとセルマ様がお持ちのスモークディスチャージャーは,初代「パワードール」でも「パワードール1」でも,何かと便利に違いない。ヤバい雰囲気になったら煙に巻くのが大人の作法である。それはよいとして,ハーディさんはきちんとサブマシンガンを持っているのに,何を考えて同じD1兵器であるバルカン砲を背負っているのか,いま一つよく分からない。さくっと対戦車ミサイルDRu25に換装して,火力を上げることにしよう。
白兵戦機からの転向組は,ハーディ隊長と同じ装備でよいだろう。こんなとき役立つのが「装備複写」である。転向組のジュリア・レイバーグさんとアリス・ノックスさんを選んで,左下の「武装複写」ボタンをクリック,複写元にハーディ機を選べば完了。また,同じ装備の組み合わせをほかの作戦でも使いそうなときは,「武装登録」しておけば一発で呼び出せる。このあたりはリメイク版ならではの改良点だ。

支援車両よりも敵地深くへ侵攻するパワーローダー部隊の,輸送パイロットには防御力に優れた人を優先で割り当てたい。そのうえで,今回はローダー全機をSILVER FOXに集めてしまう
各機の装備が決まったら,作戦要素を考えつつ各機を部隊に振り分ける。初代「パワードール」と「パワードール1」では,同じ名前のミッションといえども敵の配置と行動様式がかなり違う。ダムの手前でゲートキーパーよろしくガン待ちしていた装甲車の間を,索敵距離ぎりぎりでこっそり通り抜けたのも,いまとなっては良い思い出である。「パワードール1」の敵はもっとアクティヴで,束になって反撃に転じてくる場合が多い。つまりこのミッションも,グルカナイフを持ったSASみたいなスニーキング(隠れて行動すること)主体の戦闘ではなく,半ば強襲じみたものになることが予想される。
そう考えたとき,ミッションブリーフィングで示されるSILVER FOXを強襲降下させるか通常降下させるかという論点は,作戦の本質とあまり関係ない気がしてくる。そもそも目標が一つであり,その近辺に主たる敵がいそうな状況である以上,ローダー部隊をわざわざ二つに分けるメリットはないようにも思えるのだ。そして火力戦になる可能性が高いなら,こちらの頭数は多いほうがよい。
というわけで,SILVER FOXに大型輸送機2機を編入して,支援車両を除く全機を集結させてみる。こうすると通常降下以外選べなくなり,かつ作戦開始が15分(3ターン)遅くなるのだが,3機だけ先に降下させた場合と異なり,各個撃破される危険はなくなる。いたってシンプルな作戦にまとめたところで,いよいよ作戦地域に進入だ。
輸送機の移動力としては,ダムの脇を通る道路に面した森の切れ目まで,どうにか届きそう。対空砲火を浴びないことを祈りたい

と,その前に細かなポイントを二つほど。複数の輸送機で部隊を運ぶ場合,1機めには部隊編成時の並び順で6機のパワーローダーが積載され,残りが2機めに振り分けられる。それぞれに索敵型が入るようにしておくことが,2機めの進入時と降下後の安全を確保するために望ましい。そしてここまで調整したら,一度セーブしておくことをオススメする。戦闘が思い通りに運ばず,やり直す場合に手間が省けるからだ。
いよいよミッションが始まったら,輸送機をダムの近くまで移動させるわけだが,この場合,なるべく平地の上を縫うように飛行させたほうがよい。というのも,万一敵の対空射撃を浴びて輸送機が撃墜された場合,パワーローダーはその場で緊急降下を試みることになるためだ。森に降りるよりも平地に降りたほうが,おそらく機体損傷の確率は低いと思われる。また,いきなり撃墜されないまでも対空砲火を浴びたら,その位置から少なくとも5ヘックス,万全を期すなら9ヘックス以上後ろに降下させて,敵の索敵範囲から逃れるべきだろう。
降下シークエンスが終わったら,移動開始前に索敵型ローダーに周囲を索敵させよう

首尾よく前進できたら,ダムの近くでは1ヘックスずつ慎重に輸送機を移動させ,移動限界地点の1ヘックス手前で各ローダーを降下させよう。ぎりぎりまで輸送機を進ませてしまうと,自動的に一斉降下が行われるので注意したい。そして降下の一番手は,今回なら白兵戦機か汎用機にすべきで,索敵型は避けたほうがよい。降りたその場に敵がいる可能性も絶無ではないため,失われたらほぼ作戦失敗が確定してしまう索敵型は,最小限の視界を確保したあとに降ろすべきなのだ。同じ要領で2機めの輸送機についても積載ローダーを降ろし,降下シークエンス終了である。

索敵範囲内には,いきなり多数の敵車両がいた。ここは汎用型ローダーチームで手分けをして,装弾数が多いキャノン砲で片付けたい
ローダー部隊の行動に移ったら,何より先に索敵型2機にそれぞれ索敵を指示し,周囲の状況を掴もう。ここで敵を見つけたら,105mmキャノン砲の使用を優先して,なるべく遠くから撃破する。わざわざ遠ざかる必要はないが,これから撃とうとしている敵が戦車か装甲車か偵察車両か,はたまたどの型のパワーローダーかをきちんと確認し,敵の索敵範囲に入らない位置から撃破してしまいたい。ミサイルを使えばいろいろ楽ではあるが,そうであるからこそ使わざるを得ない局面まで温存することを考え,地道に敵を射線に捉えていきたい。なお複数の敵がいる場合,誰かに1機撃破させたら,次は別の誰かに攻撃を命じて,AP(アクションポイント)と弾薬の消費をなるべく分散させる。こうして,原則的に見えている敵をすべて撃破してから進撃である。

味方に近い位置で,敵の機体強度がひとケタになったら,サブマシンガンで止めを刺すとより経済的。ただし,ここでも対地攻撃補正は影響するため,ヤオ姉さんが無駄にてこずっていたのはご愛嬌
敵を片付けたら索敵型ローダーを3〜4ヘックス進ませ,索敵範囲を前方へと伸ばしていく。このあたりにもう敵がいないことは分かっているので,高速移動でかまわない

パワードールシリーズはサーチ&デストロイが身上であって,いかに敵を見つけ,敵に見つからないかが致命的に重要だ。部隊全体の進撃に当たってはまず,索敵型を現在いる位置から3〜4ヘックス前進させて再度索敵させ,その結果にしたがって敵を排除しつつ,ほかの機体に索敵型を護衛させ(1ヘックス程度離れて囲む)ながら進むのがセオリーである。こちらの索敵範囲が(索敵型が初期設定どおりマルチセンサ1個を装備した状態で)11ヘックス,敵のそれが9ヘックスであるから,現在敵が見えていない以上,原則として4ヘックス刻みで索敵し直せば,不意に敵の視界に踏み込んでしまう心配はない計算になる。  そうしたペースで森の切れ目からダム方向に,ローダー全機を移動させていく。そして,いずれかのパイロットの残りAPが,「隠蔽」アクションに必要な6ないし3に,臨機射撃に必要な1を足して7もしくは4まで減ったところで全軍停止し,全員を隠蔽状態にしてそのターンを終える。このとき,決して見えている敵が残ったままにすべきでないことは,先ほど述べたとおりである。
   
進んだ先で敵を見つけたら,同じように片付けていく

そんな要領で平地からダムへ向かう道路へと,敵を排除しながら慎重に進んでいく。ダムの手前数ヘックスの地点までには,おそらく5〜6両の車両を撃破していることになるだろう。だが敵は3個中隊規模だとすれば,残りが10機くらいいても不思議ではない。非常にやりづらいことに,索敵範囲の外,おそらくダムを挟んで対岸にはそれだけの敵が残っているのである。
さて,以上のような行動方針に加え,移動効率を優先して道路沿いに留まるのは危険と判断して,ダムの手前まで来たら防御ボーナスのある森にほとんどの機体を潜ませ,隠蔽状態で自分のターンを終えてみた。だが,敵は案の定ダムを越えて突出してきて,臨機射撃の甲斐もなくこちらの何機かが索敵範囲に捉えられ,先頭に立てた白兵戦機のヤオ姉さんと,ジュリア・レイバーグさんの機体が撃破されてしまった……。森の中に潜んで射線が通らないように気をつけていても,グレネード系の曲射兵器で攻撃されることはある。このあたりが「パワードール1」におけるアクティヴな敵の恐ろしいところだ。

こちらの索敵範囲の外から,決死の覚悟で突出してくる敵には,割と為すすべがない。索敵型ローダーの前に出て盾になっていた二人が,よく耐えたものの撃破されてしまった
ヤオ姉さんのかたきをセルマ様が討つ図。いや,少佐殿は撃破されてもゲームルール上死んでいないので,そこはご安心を

敵が打って出てきた以上,即座に逆襲すべきである。グレネード系兵器をあれだけバカスカ撃ちまくってくれたことからも分かるとおり,敵ユニットは近くにいる。まずはこちらの索敵範囲に飛び込んできた敵を片付け,現時点でAPに余裕のある汎用機を慎重に,場合によっては「警戒移動」でダムのすぐ手前まで進ませ,その1歩後ろに索敵型を持って行って,ダムの対岸までを見渡す。そこで見つけた敵はミサイルの使用も辞さず,片っ端から撃破しつつ,いよいよダムの上へと進んでいく。同じターン中にダムの反対側,できれば対岸一歩手前までどれか汎用機を進ませ,例によってそのまた一歩手前まで索敵機を出し,対岸をなるべく広く索敵範囲に捉えたいところだ。

幸い索敵機は2機とも無傷だったので,連携させて移動させつつ,視界を前に広げる。見える範囲に敵はいないが,まだ油断できない
こうして敵を排除し,対岸への警戒態勢を固めたら,いよいよ爆薬設置に取り掛かりたいが,その前にファン・クァンメイ機とセルマ様の機体を対岸寄りまで移動させ,対岸とダムの入り口との間を煙幕で塞いでおきたい。索敵で,向こう10〜11ヘックス以内に敵がいないことは分かっていても,前述のように敵の偵察車両は9ヘックスの索敵範囲を持っているため,次ターンに捕捉撃滅されることを覚悟のうえなら,いつでもこちらを索敵範囲内に捉えられる。そんななかで悠長に爆薬設置作業などできたものではあるまい。そこで,失礼してカーテンを引かせてもらうのである。案の定,二度ほど偵察車両が煙幕内に突入してきたが,大事にはいたらなかった。


対岸からダムへの入り口を,スモークで目隠しする。スモークは索敵の妨げになるほか,移動時の必要APも引き上げる効果がある
案の定,敵の車両が突入を試みてきたが,スモークによって前進を阻まれた。工兵スキルを持たない隊員に片付けさせ,爆薬の設置作業に入る

爆薬の設置は,たいへんAP負荷の大きい作業である。工兵スキルを持つ隊員に優先してやらせたいところだが,そうはいかない場合もあるだろう。そこで一つ憶えておきたいのが,あるヘックスでの設置作業は,同じくTX48を持った,ほかの隊員に引き継げるのだということ。ある隊員ができるところまで作業を進めたあと,その隊員を移動させて,ほかの隊員が続けるといったことも可能なのだ。これで,些少なりとも作業効率が上がるはず。爆薬の設置が完了すると,ハーディ隊長による撤退命令ダイアログが開き,めでたくミッションコンプリートである。

爆薬の設置作業は,工兵スキルの持ち主に担当させれば消費APが半分になる。また,爆薬を持つ隊員同士で作業を引き継ぐことも可能だ
これで一応作戦は成功だが,以上にように戦ってみて,1機の犠牲も出さない完全勝利を目指す方法も明らかになったように思う。カンの良い人はすでにお察しのことと思うが,初めから鬼門と分かっていたダム手前の道路およびダム上に,あらかじめ煙幕を展開してから進めばよいのである。進撃速度は鈍るし,直射兵器であるキャノン砲が使いづらくなるものの,ミサイルやグレネードランチャーを存分に使えば問題ないし,「パワードール1」におけるスキル制の導入で,爆薬設置作業は効率的になったため,これも十分アリな気がする。

設置作業を完了させてターンを終えると,隊長から撤退指示が出て,作戦は成功である
そしてそう考えたとき,あらためて白兵戦機と先行強襲降下に意味が出てくる。いっぽう「パワードール1」でアクティヴになった敵には,タイムラグのある支援砲撃はあまり有効でないかもしれない。いっそ,ローダーに載せて降下部隊の頭数を増やしてみてはどうだろう……? こんな風にして“出題意図”を実地で把握しつつ,理想の作戦展開を考え直してみるのも,ストラテジーゲームならではの楽しみ方といえるのではないだろうか。
次回は「ナイアガラドロップ」シナリオを攻略する。
◆鈴木俊之(Guevarista)
PCゲームとのつきあいは,かれこれ20年以上になるフリーランスライター。PC雑誌およびインターネットメディアでのペンネームはGuevarista(ゲバリスタ。ゲバラ主義者)でおなじみ。それはよいとして,最近日本でも劇場公開されたチェ・ゲバラ二部作のおかげで,ちょっとミーハーに見えるようになってしまったのが,ひそかな悩みらしい。なお正直に述べておくと,初代「パワードール」との出会いは「for Win 3.1/95」から。元来バリバリのヒストリカルゲーマーだという。