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「わかっています。ですが、その前に一つ約束をしていただけませんか?」

 シャオリーは、話ながらゆっくりと目を閉じる。その顔から、表情は消えていた。

「……約束?」
「私のことを好きにするのは構いません。ですが、さきほどの質問はもうしないと約束していただけませんか? お願いします」
「約束なんて言える立場だと、本気で思ってるのか?」
「思ってはいません。ですから、こうしてお願いをしているんです」

 その声は思ったよりも冷静で、情に訴えかける風でもない。

「……断る」
「では、私は契約を破棄します」
「金は?」
「あきらめます」
「……ほう」

 シャオリーの上にのし掛かったまま、逡巡する。ここの場所が法に守られているのかどうかは微妙なところだ。そのうちのいくつかは、確実に無効になっているのだろう。たとえばジーンとシャオリーとの契約に含まれている、これから行われようとしている行為などは。
 このまま続けたとしても、おそらく俺が罰せられることはないだろう。それほどまでに、今の俺には特権があるはずだ。
 しかし――

「良いだろう。その代わり……」

 肩を掴む手に力を入れる。その痛みでシャオリーは顔を歪めたが、声は出さなかった。

「ありがとうございます」

 そう言って、無理矢理に笑みを浮かべた。