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 コンクリートのむき出しの壁が、寒々しさを誇張するように人々を取り囲んでいる。空調は完全にその役割を果たし、温度も湿度も快適な数値を示していた。にも関わらず、全面を覆う灰色の壁のせいか、肌寒さを覚える者もいた。この大きな部屋に一つしかないドアを守る兵士らしき男が、わずかに身体を震わせ、薄気味悪そうに肩をすくめた。
 奥行きだけでも十メートル以上ありそうなこの部屋には、八個の長机と椅子が、コの字型に並べられている。壁の一面は巨大なスクリーンになっていて、投影装置の端末とモニター、そしてサイドテーブルがその脇に備え付けられていた。
 部屋に入る前にドアの上のプレートを見たのなら、ここが会議室であるとわかるだろう。しかし居並ぶ人物の顔を眺めると、それぞれが特徴的で、ここで行われる会議がどのようなものであっても、ふさわしくないように見えた。
 壁に背をつけ立っている少年。スクリーンの前で考え込む、白衣を着た女。柄の悪そうな青年と小声で話しているのは、所々に穴の空いたスーツを着込んでいる中年の男だった。その二人からわずかに離れた場所にいる、ストリートキッズといった感じの少女。
 壁に掛けられた丸い時計は夜の十時十分を指している。ホログラムの長針と短針が、ショーケースの中の時計のような、美しい配列をしていた。
 ここは、なにか異様な雰囲気を演出するための舞台のように、なにかがおかしかった。

 兵士がドアの前でわずかに身を捻り、仰々しい動作で扉を開いた。一人の少年と少女が中に入り、落ち着いた様子で手近な椅子に座った。兵士が入れ替わるように外に出て、それから全てが始まった。

「さて、それでは始めましょうか」

 スクリーンの前にいた女が、コーヒーでも飲みましょうか、というようなさりげない口調でそう言った。その声は決して大きくはなかったが、全員がはっとしたように彼女を見た。女はそれを見て、満足そうに頷く。
 その白衣の女を除くこの場にいる誰もが、理由も聞かされず、得体の知れないこの施設に呼ばれたのだ。一週間前からこの施設で足止めを食らっている者も、中にはいた。
 そしてつい十数分前、急遽この部屋へと皆が集められた。たった今この部屋へと足を踏み入れた一組の男女が、最後の待ち人であったらしい。
 全てが秘密にされたまま、しかしここに集まった者は、それぞれの思惑を抱えていた。