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 今日は、なかなか有意義な一日だった。
 特にあの後のアロイスの話は、興味がつきなかった。彼が能力を手に入れたきっかけ。そしてアイとの出会いのこと。つまるところ彼の能力は、全てアイのためのものだった。
 ウォルシュは相変わらず人の話を聞いているようには見えなかったが、それは仕方ないとあきらめることにする。感情を消すなんて、一体どんなきっかけがあったんだろう、と考えずにはいられない。
 それに、一応俺の力で、ウォルシュを牽制できることもわかった。後は成り行きに任せ、犠牲者を決めるための話し合いを続ければいい。もしくは、二人が言っていたように、殺し合いを。

「ほんとあいつらって面白いよな、サイファ」

 笑いながら話しかけると、サイファは声を立てずに同じように笑った。
 あれからすぐにアロイスの話が始まったから、食事は八時間ぶりくらいだ。せっかく本場に来たということで、とりあえず食べきれないくらいのステーキを二人分注文した。もうそろそろ届く頃だから、ベッドに寝転がっていた身体を起こし、席に着く。

「食いきれないくらい、って言っといたから、今日は好きなだけ食べろよ」

 サイファが、俺の顔を見て笑っているのか、それとも食事を楽しみにして笑っているのかは、やっぱりわからなかった。