|
サイファが、隣で寝息を立てている。昨日まで寝るときは別だったぬいぐるみが、今はその手に握られていた。
初めて見せた強い感情が、悲しいとか、怒っているとかだったのは少し残念だった。でも、一つわかったことがある。サイファには感情がある。嫌だと思うこともあるし、好きな物もある。
ぬいぐるみを取られたと思って、明日になって嫌われてなければいい。
今日はたくさん泣いたけど、明日は心からたくさん笑えるといい。
あのぬいぐるみは、どういう物なんだろうか。
明日、ジーンにでも尋ねてみようか。
思考は止めどなく流れ続けている。
が、その思考も、あまり意味がなくなってきていた。
最後に、ぽつりと思い浮かんだのは――
この記憶だけは何があっても消したくないという、ささやかな願いだった。
 |
Sprout
of tears ---END |
index |
|