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 最悪な目覚めだった。
 シーツの下はすぐ素肌で、少し肌寒い。身体はだるく、頭を振ると、軽く頭痛がした。ベッドから起きあがろうとしたが、すぐに諦める。
 起きる少し前まで、夢を見ていた。全てが不快だった。
 思い出すのも不愉快だったから、深い呼吸を繰り返し、気分を入れ替える。

「シャオリー。飲み物をもってこい」

 視界の端で動いていた影に話しかける。朝はまだ早いようだったが、きちんと服を着て、彼女はなにかをしているようだった。

「何になさいますか?」

 声に怯えはなく、冷たく硬質な質問が返ってきた。

「朝はコーヒーだ。次から忘れるな。砂糖はなし、ミルクは入れろ」
「かしこまりました」

 事務的な返答に満足し、昨日からの彼女の変化にも満足した。
意外にも、彼女は娼婦ではなかった。昨夜の嫌がっている様子は、演技とも思えなかったが。本当に演技で、俺がそれを喜ぶ客だと思われたのなら心外だ。


 シャオリーが何者かという疑問について、それ以上深く考えようとは思わなかった。
 彼女は、くだらない理由で個人としては莫大な借金を抱えている、俺の嫌いなカラードの少女だ。その借金のために俺の死を願い、そして今では、憎しみのために俺の死を願っていることだろう。そこだけが重要なポイントで、他はどうでもいい。
 シャオリーはとにかく俺の死を願い、その願いが果たされる術を探すだろう。そしてそれを実行に移すとき――
 実行に移した時、俺はどうするつもりなんだ?

 答えはシンプルだ。もう一度、彼女を殺す。