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 夢の続きが、にわかにフラッシュバックする。
 使い古した衣服の据えたにおい。売れ残った屋台のマフィンの甘ったるい香り。ゴミ捨て場から漂う生ゴミの、なにかが腐ったようなにおい。ダウンタウンの空気だ。
 一番鮮やかなのは、血と硝煙のものだった。

 においの洪水の後には、鼓膜を震わせる音の固まりが、降り注ぐ。
 思い切り握った自転車のブレーキ音。無関心に通り過ぎるトラックの排気音。開かれる窓と、閉じられる窓の音が入り交じり、悲鳴と笑い声が交差した。屑の住む町の音だ。
 その中心で、心臓の鼓動がひときわ大きく骨を伝わった。