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 会議室に五分ほど遅れて着いたが、誰も何も言わなかった。ジーンでさえ、タバコの火を消しながら早く座るように目で促しただけだ。そのことに軽く満足はしたものの、笑顔で会釈なんかは絶対にしない。不機嫌を装い、話し合う価値などないと思われれば、それだけやりやすくなる。初めから会話をする意志を持たないとわからせておけば、アキラとアロイスは、そのどちらかの間で決めようとするはずだ。無理矢理に言うことを聞かせることのできない、レス、アンチ系の能力者が相手では。

「これからあなた達には、誰がシャトルに乗るかを話し合ってもらうことになるわ。その方法についても。でもその前に、説明が必要なことがいくつかあるの。一度に話せる量じゃないし、ゆっくりと時間をかけて理解してもらうようなことだから、これから毎朝、この時間には必ずここに集合するように」

 ジーンが、開口一番そう言った。うんざりするような話し合いの前に、うんざりするような説明があるというわけか。席を立とうかと考えていると、ジーンが突然アキラの名前を呼んだ。そして、何を考えているのかわからないが、当のアキラも話を聞いていなかったらしい。

「あなた達の中の誰か一人は、今から六日後、シャトルに乗ることになるわ」

 ジーンは続ける。

「そして、約四十八時間の宇宙飛行の後、隕石と接触する」
「……接触の際、シャトルは?」

 アロイスが疑問を挟むが、ジーンは面倒くさそうに「大破」と答えただけだった。
 その後も二人のやりとりが続いたが、俺は半分聞くのをやめていた。後ろに立っているシャオリーに話を聞いておくように命令し、なにも考えずに時間をつぶしていた。