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文句も、満足の言葉もなく、サイファは出された食事を綺麗に片づけた。美味しいな、と話しかければ笑みを浮かべるが、ただの反射のようにも思えてくる。時折俺が話しかけるよりも早く反応することもあったけど、それさえも……という疑問は常に消えなかった。
「まあいい。そろそろ行こうか」
なんとなくサイファの手を取って歩き出そうとすると、サイファはその手を払って小走りでベッドに行き、いつものようにウサギのぬいぐるみの耳を掴んだ。そして俺の元まで戻ってくる。
考えてみれば、いつもそうして持っているが、別段大事にしているようにも見えない。持ち方ひとつとっても、抱きしめるわけでもなく、ただ耳を持ってぶらぶらとさせている。ずっとそうしてきたのだろう、一度耳から千切れた跡があり、今は応急処置でざっと縫ってあるだけだった。
「なあ、そのぬいぐるみって……」
大事な物なのか? と尋ねようとして、どうせ答えはないのだと止めた。
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