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後ろをついてくるサイファに歩幅を合わせながら、今日これから話す内容を、頭に思い浮かべる。
自分の話、といっても、大して話せることはない。生まれてから今まで、記憶があるのはわずか数年といったところだ。膨大な空白の期間に点在する無数の記憶をなんとか継ぎ接ぎして、ようやくそれだけ。連続した記憶は、一年にも満たない。
今から一年前。十四歳の時、俺は全ての記憶を自分の手で消した。それを話すのは別に苦痛でもなんでもなかったが、そうして意識を記憶に向けると、いつも疑問に思うことがある。
――自分はなぜ、記憶を消したんだろう?
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