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「俺の能力は、記憶を消すこと。自分のもそうだけど、他人のも消せる。消せる範囲は、自分が知っていることだけ、かな」

 ウォルシュは相変わらず真面目に聞こうとはしていなかったけど、アロイスは興味深そうに頷き、俺の唇の動きに集中したのがわかった。

「自分の記憶に関しては、まあ知っているのは当たり前か。他人の場合だけど、話で聞いたこととか、あるいは単語、事柄、そういったものに関する記憶を自由に消すことができる。あとは……全ての記憶を消すっていうのも、多分できる。やったことはないけど」

 アロイスが、わずかに緊張するのがわかった。確かにこれは危険な能力だ。全ての記憶を消した場合、人はどうなるのか。廃人になるか、もしくは再び赤子からの成長を余儀なくされるのか。

「その能力を得たきっかけを話そうか」